2010年3月4日号
最近多く見られる病気ー2
前回は、最近肥満が多くなってきたとお話をしました。そして肥満は犬や猫で心臓病、気管虚脱など呼吸困難、脂肪肝、糖尿病など内分泌障害、尿石症、関節炎や靭帯断裂などの関節の病気、がんなどの腫瘍、等々多くの疾患のリスクを高めるといわれていることを書きました。
では、減量して適正体重にするためにはどうすればいいのでしょう。まずは、おやつや運動などの生活を見直して下さい。ある療法食メーカーの指導本には普段家族一人一人があげているおやつをひとつのビンにためてみると、1日にあげているおやつの総量が把握しやすいと紹介されています。それぞれは少量づつのつもりでも合計では意外に多くのおやつをあげているかもしれません。こうして少しづつ生活を見直して徐々に減量していって下さい。
しかし、過度の肥満に対しては食事管理をしていく必要があるでしょう。全体の摂取カロリーを減らすのはもちろんですが、通常食を極端に減らしてしまうとカロリーだけでなく、筋肉や内臓や骨を維持するために必要なタンパク質やビタミン、ミネラルなどが不足する恐れがありますから注意してください。
人のダイエット本などにも書いてありますが、減量をすると体脂肪だけではなく筋肉量も減ってきますから、一度体重が減少した人がリバウンドすると前と同じ体重になったとき、以前より体脂肪が増えて筋肉量が減ってしまうので基礎代謝量が減少して、以前よりも体重が落ちにくくなります。これを繰り返すとどんどん痩せにくい体質になってしまうということです。ですから総摂取カロリーを落として減量をしながら、適度な運動や適切な栄養で筋肉量を落とさないようにしなければなりません。
減量においては、ただカロリーを減らすだけでなく適切な栄養や健康状態のチェックが大切ですので、本格的な減量はかかりつけの獣医師にご相談ください。そして体重を一気に落とすのではなく長い期間で徐々に健康的に減らしましょう。たとえば体重60㌔の人が1カ月に1㌔減量するのと、体重10㌔の犬が1㌔減らすのでは、その減少率には大きな差があることを覚えておいてください。何㌔減ったと思うより、何㌫減ったと考えて下さい。小さい犬にとっては、わずか数百㌘がかなりの減少率になります。逆にわずか数百㌘の増加がかなりの増加率になってしまいますので注意が必要です。
こう書きながら、メタボの私はまるで自分のことのように反省しています。
わかっちゃいるけど痩せられない…です。焦らずゆっくり、がんばりましょう。
back number(2010)
2010.0103
2010年 春
左から、ニコ(9月11日生まれ・♀)とゴン美(13〜15歳?・♀) あけましておめでとうございます。
昨年は皆さんにとってどんな一年だったでしょうか。筆不精を自認する私は、昨年の魚沼よみうりにほとんど寄稿せず、編集者にご迷惑をおかけしてしまいました。今年はもう少し頑張りたいなと思っております。
さて、一年は早いもので歳を取るごとにあっという間に過ぎてしまいます。そして今年はとうとう私も年男です。24歳?36歳?いえいえ、ついに48歳になってしまいます。この次は60歳還暦ですよ。自分でも信じられないくらい月日の経つのは早いですね。気持は若いつもりですが、体のほうはそろそろガタが来はじめました。膝は大学の部活動で痛めた古傷が…。続いて腰も首も。それから老眼?特に手術後の抜糸のとき、小さな糸が見えにくくなって…。と新年早々、情けないことをたくさん書いてしまいました。でも、最近は同級生が集まるとそんな話になったりして、自分だけじゃなかったのかと少しホッとしたりもします…。そういえば同級生の中にも、孫が出来てじさやばさになったのがいますから、しかたないのでしょうか。
歳の話になってしまいましたが、犬や猫も近年は長生きの傾向にあります。少し古くなりますが、3,4年前に新聞に出ていた平均寿命のデータでは、犬11・9歳、猫9・9歳でした。
この記事を見たとき、犬は私が漠然と思っていた寿命と大体同じでしたが、猫についてはすこし寿命が短すぎるかなと感じました。というのは、日々の診療の中で15歳を過ぎる犬は少なくなり、18歳を過ぎ20歳を超える犬はほとんど聞いたことがありません。対して猫は15歳以上でも結構よく見かけますし、20歳を超える猫もわりといます。この間は24歳だという猫の話も聞きましたから、平均寿命は別として猫のほうが長寿のように思います。その新聞にあった犬より猫の平均寿命が短いというデータは、おそらく、外出自由の猫が交通事故や病気などで比較的若い年齢で死亡することがあるため、平均寿命を下げる結果になっているのだと私は思っています。そういえば世界最長寿としてギネスブックに認定された雌犬のダックスフントが21歳で亡くなったと、昨年の新聞記事に出ていたのを思い出しました。その記事によると、人間なら147歳に相当するそうです。
食生活や飼育環境の改善、獣医療などの進歩の結果、以前より動物たちが長生きになったのは間違いがないようです。しかし、それらのために増えてくる病気も最近は多く見受けられるようになってきました。詳しくは次の機会に譲りますが、人間社会と同じような病気が多くなってきたように思います。いずれにしても、元気で長生きは大変喜ばしいことですから、私達も愛する動物たちも元気でいつまでも共に楽しくこの一年を過ごしていきたいものです。
2010..2.25
最近多く見られる病気ー1
前回、食生活や飼育環境の改善、獣医療などの進歩の結果、以前より動物たちが長生きになったと述べました。そして、それらのために増えてくる病気も最近は多く見受けられるようになってきたと書きました。
たとえば癌、糖尿病、慢性腎不全、アレルギー、アトピー性皮膚炎などです。他に目立つのは、いわゆる肥満です。「肥満」とは、「体脂肪率が増加した状態」のことで、理想体重より15%以上重い状態を肥満としています。そしてこれは犬や猫で心臓病、気管虚脱など呼吸困難、脂肪肝、糖尿病など内分泌障害、尿石症、関節炎や靭帯断裂などの関節の病気、がんなどの腫瘍、等々多くの疾患のリスクを高めるといわれています。
肥満は犬、猫共に最近多く見られますが、ある調査(日本ヒルズ)によると動物病院に来院する犬のうち30%以上が肥満または太りすぎ、猫では20%以上が同様だったとのことです。肥満チェックの一つの指標としてボディコンディションスコア(BCS)という5段階評価がよく用いられていますので、詳しくはかかりつけの動物病院などでお尋ねください。簡単な目安としては生後1歳の頃の体重を参考にしてみて下さい。犬(犬種により多少異なる)や猫ではだいたい1歳くらいでほぼ大人になると考えられますから、その頃の体重がひとつの目安となります。今の体重が15%以上重いようなら、現在は肥満の可能性があります。
肥満の要因としては過食、避妊や去勢(肥満の要因のひとつといわれることもありますが、性ホルモンの関係した幾つかの病気の予防や性行動、繁殖制限等の有効な手段としてこれらの手術は推奨されています)、運動量の減少、加齢など様々ですが、中でも過食は肥満の大きな要因と考えられます。特におやつが肥満の原因になっていること多いのではないかと思います。人の食べ物をあげたり、家族全員が少しずつ、おやつをやっていて合計ではかなり多く食べていたなどというケースが多いのではないでしょうか。もう一度チェックしてみてはいかがでしょう。
肥満自体は病気だとはいえませんが、いま述べたように最近は比較的多く見られ、さまざまな病気のリスクを高めます。「万病の元」とは言えないかもしれませんが「万病の誘因」くらいのことは言えるのではないでしょうか。人のメタボと似ていますね。(つづく)
back number(2007〜2009)
1.狂犬病の知識(現状)(魚沼よみうり2007年新年号掲載)
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
さて、皆さんにとって昨年の重大ニュースはなんでしたか?我々獣医師業界での話題といえば、昨年11月に国内で2人もつづいてあった狂犬病の発症例でしょうか。テレビ等で取り上げられていたので、ご記憶の方も多いと思います。1970年ネパールで犬に咬まれた青年が帰国後死亡して以来、36年ぶりの国内での狂犬病発症です。いずれもフィリピンで犬に手を咬まれ、帰国後に発症してしまったという輸入感染症ですので、すぐに国内で流行するとか人や犬が危険だということではありません。しかし、さまざまな分野で地球規模の交流が行われている現代は、決して他人事ではありません。
狂犬病は日本、英国、スカンジナビア半島の国々などごく一部の地域を除いて、全世界に分布しています。アジア、アメリカ等私たちにとって身近な国々で今も発生している恐ろしい病気です。その恐ろしさは発症するとほぼ100%死亡するところにあります。狂犬病の死亡者数は全世界で5万5千人、うちアジア地域3万1千人(WHO 2004)と推計され現在もなお多くの人々が亡くなっているのが現状です。さらに年間の暴露(狂犬病感染の恐れのある動物に接触したり咬まれたりすること)後のワクチン接種者は推計1千万人にもおよんでいます。今回2人の発症者が渡航していたフィリピンでの死亡者数は248人、犬の発生数は1,546頭(2004年)という状況です。さらに昨年は、中国の雲南省で5万匹の犬が一斉処分されたとか、北京ではペットの日中外出が禁止されたという報道もありました。このように狂犬病は海をへだてたすぐ隣で現在も発生し、多くの国々がこの病気に対して頭を悩ませているのです。アメリカやヨーロッパなどの先進国といわれる国々も例外ではないのです。
冒頭で触れたように、多くの人や物が国内外をさかんに行き来する時代です。ですから他人事でなく狂犬病を身近な問題として、受け止めてもらいたいと思います。年頭の話題としてはやや堅苦しいようですが、狂犬病に関する知識を深めることは大切です。今後何回かよろしくお付き合いください。
今年が皆さんにとってよい年でありますように。
2.狂犬病の知識-2(魚沼よみうり1月18日号掲載)
「歴史と経過」
前回、狂犬病は全世界のほとんどの国で発生し、清浄国はわが国などごくごく一部だということをお伝えしました。今回は歴史と経過です。
この狂犬病は紀元前2000から1700年頃には人類に知られ、ハムラビ法典にもその記載がされているとのことですから、約4千年ものあいだ未だ根絶されず人類に恐れられているのです。今でも発展途上国ではまだまだ狂犬病対策自体が十分とはいえませんし、統計も不正確なところがあります。一方、先進諸国では犬の狂犬病はコントロールできているものの、野生動物の間に流行がありキツネ、タヌキ、狼、ジャッカル、アライグマ、スカンク、コヨーテ、マングース、ネズミ、リス、クマ、コウモリ等様々な動物の狂犬病が報告されています。野生動物は国境に関係なく移動し、大陸は面積が広大なため狂犬病清浄化が困難になっています。ですから、先進国といえども海外旅行のときは注意が必要です。
わが国でも古くは717年の古文書にその記載があり、以降いろいろな書物にその記載があるようです。そして1732年頃江戸時代に長崎から始まった狂犬病は全国的に大流行していきました。以降明治、大正、昭和と200年以上にわたり狂犬病が流行し、多くの人々が甚大な被害にあってきました。特に大正12 年の関東大震災前後、昭和20年終戦前後の混乱期と朝鮮戦争特需景気の昭和25年頃を中心とする大流行がありました。
そこで、わが国では昭和25年に狂犬病予防法を制定し本格的な対策を講じました。その大きな柱は犬の狂犬病ワクチン接種の実施です。これにより生後91 日令以降の犬の登録と狂犬病予防ワクチンの接種が義務化されました。そして関係者の努力によって昭和32年以降国内の狂犬病発生はみられず、世界に数少ない狂犬病清浄国としてその状態を維持しているのです。これはたいへんすばらしいことです。
しかし、輸入感染症として36年ぶり、国内での狂犬病発症者が連続してしまい、残念ながら2人の患者さんは亡くなってしまいました。今後もその可能性は否定できません。
いったい、狂犬病とはどういうものなのでしょうか……。
3.狂犬病の知識-3(魚沼よみうり1月25日号掲載)
「病気の特徴と症状、治療」
前回は狂犬病の簡単な歴史と日本での発生経過、海外の状況をお話しました。
狂犬病は発症するとほぼ100%死亡する病気だということは知っていましたか?
名前については皆さんもよくご存知でしょうが、狂犬病は人を含む哺乳動物すべてに感染するということは知っていたでしょうか。前回述べたように、人や犬、猫はもちろん、他のあらゆる哺乳類に感染し、発症するとほぼ100%死亡します。これが大きな特徴です。
この病気は、感染動物の唾液中に含まれる狂犬病ウイルスが、おもに咬傷部位から進入することにより起こります。このウイルスは神経を伝わり(向神経性)、脳に到達し発症します。人にこのウイルスが感染してから発病するまでの潜伏期間は、咬まれた部位等により十日から一年以上と大きな開きがあります。時には数年してから発症したと考えられる例もあるようです。これが狂犬病のもうひとつの大きな特徴です。
人が発症すると、風邪の様な症状から、嚥下筋の痙攣による嚥下困難でいわゆる「恐水病」発作に襲われ、3日から三週間で死の経過をたどります。発作時は強い不安感、恐水恐風症状、声帯麻痺等による奇声、錯乱、全身痙攣が現れ、昏睡状態に陥り、呼吸不全となり死亡します。それ以外のときは意識清明であるため、いっそう肉体的、精神的苦痛も加わりたいへん悲惨な症状だということです。以前、狂犬病を発症した犬のビデオを見たことがありましたが、やはり同じような衝撃的な症状でした。
治療法はありません。症状が出てしまうと対症療法をするくらいで他に有効な方法はありません。ほぼ100%死亡します。咬まれたりしてその危険性があるときは、咬まれた直後からワクチンを何回も打つことが唯一の有効策です(暴露後ワクチン接種)。暴露後ワクチン接種は0、3、7、14、30、90日の6 回打つことが推奨されています。たいへんな労力(時間とお金)が必要です。
4.狂犬病の知識-4(魚沼よみうり2月1日号掲載)
「港湾周辺事情」
狂犬病は治せないばかりでなく、たいへん悲惨な症状を示す恐ろしい病気です。諸外国には現在も多く発生している現実があります。ですから、あらゆる分野で地球規模でボーダレス化が進む今、日本への侵入の機会はゼロではありません。特に動物の輸入や不法上陸などには注意が必要だと思います。輸入に関しては平成10年に狂犬病予防法が一部改正されて検疫対象動物が犬、猫、アライグマ、スカンク、きつねとなり検疫制度が強化されました。
でも、不法上陸問題に関しては注意が必要です。たとえば、ロシア船の六割以上が犬を乗せていたという調査結果があります。ロシア船の国内入港状況は 8,200隻にも達します(2000年)。また、ロシア極東沿岸では毎年少なくとも十頭前後が狂犬病を発症し、登録された犬で狂犬病の予防注射を受けているのは約25%と推計されています(平成14年・読売新聞)。つまり、たとえ飼い犬でも10頭中7、8頭は狂犬病の予防注射を受けていないことになります。単純に考えると日本に来るロシア船で年間延べ約五千頭の犬が来て、狂犬病の注射を受けていない犬は延べ約3,800頭になる計算です。このように日本の港では、狂犬病の発生があるロシアからきた犬が検疫を経ず不法に日本の土を踏む可能性もあるので、港をうろついている飼い主不明犬などには触らないほうがよいでしょう。実際そのような咬傷事故は毎年発生しているようです。ロシアだけでなくさまざまの国から船舶がやってきます。
新潟も海に面しています。それも日本海側の主要港湾ですから、いろいろな可能性があると考えられます。新潟でも何か問題が起こらないともかぎりません。十分な注意が必要です。
5.狂犬病の知識-5(魚沼よみうり2月1日号掲載)
「海外旅行時の注意」
現在、輸入検疫の強化や犬の狂犬病予防ワクチン接種の義務化により、国内では清浄化が保たれています。
国内では犬に咬まれて病院で治療をしても、破傷風のワクチンは打ったという話は聞きますが、狂犬病ワクチンを打ったというのは聞きません。我々も犬や猫、他の動物の診療時に怪我をすることがありますが、狂犬病についてはあまり心配しません。それは今のところ、国内には狂犬病が無いからです。
しかし、海外ではこれは常識でなく非常識です。咬まれたらワクチンを打つのです。年間の暴露(犬だけに限らず狂犬病感染の恐れのある動物に接触したり咬まれること)後のワクチン接種者は世界で推計一千万人だと、初回に述べました。フィリピンでも毎日、100人くらいの人々が暴露後ワクチン接種をしているのだそうです。前に書いたように暴露後ワクチン接種は0、3、7、14、30、90日の六回打つことが必要ですので、多くの時間と費用がかかります。ですから、海外に渡航する場合は以下のことに注意してください。むやみに犬や猫、野生動物に触らないこと。むやみにそれら動物に手から直接餌を与えたりしないこと。万一かまれた場合には、直ぐに傷口を石けんと清水でよく洗浄し、医療機関を受診すること。狂犬病と抗狂犬病ガンマグロブリンおよび破傷風のワクチン接種を受ける。暴露後ワクチン接種は前述した通り、複数回必要です。
また流行地域に長期間滞在するなど、狂犬病感染に対する危険性が高いような場合には、渡航前に狂犬病のワクチン接種を受けるとよいでしょう。場合により四週間間隔で、2回と6ヵ月後に1回受けます。5年間くらい有効だとのことですが、詳しくは医療機関でお願いします。県内では2つの病院で受けられるようです。
6.狂犬病の知識-6(魚沼よみうり2月22日号掲載)
「咬傷事件の対応」
前回は海外渡航時の注意と咬傷事故のときの対応についてでした。
それでは、国内での犬の咬傷事件の対応はどうでしょうか。もし不法上陸犬等に咬まれた場合には、前回述べたような海外咬傷時と同様な対応が必要でしょう。万一があってはたいへんです。
素性のしっかりした飼い犬の場合は、傷の程度にもよりますが直ぐに傷口を石けんと清水でよく洗浄し医療機関を受診してください。また、犬の咬傷事故として保健所に連絡してその指導に従いますが、通常犬に対して狂犬病の鑑定が必要です。狂犬病にかかった犬は発症の約3〜5日前から唾液中にウイルスを排出するといわれていますので、その後約2週間経過を観察します。飼い主とワクチン予防歴がしっかりしている犬は、国内では狂犬病の心配はほとんど無いと思います。しかし、万一狂犬病の疑いがあるような行動や症状が診られた場合には、犬を鑑定のため処分して検査しなければなりません。可哀相なことですが、これは生前診断が困難であるために脳組織から確定診断しなければならないためにどうしても必要なことになります。たまたま別の原因で脳炎症状を起こして行動異常が認められればその対象にならないとも限りません。
狂犬病が国内にあれば、動物に咬まれるたびに狂犬病の心配をしなければならず、それがどんなに大変なことか。国内に無いということが、どんなにありがたいことか計り知れません。
7.狂犬病の知識-7(魚沼よみうり3月8日号掲載)
「まとめ」
幸いにも狂犬病は約50年間国内清浄が保たれています。でも、以前発生した家畜の口蹄疫は九十二年ぶり、また高病原性鳥インフルエンザの79年ぶりの侵入発生、さらにBSE(牛海綿状脳症)問題などをみると、外国であることは日本に起きるかもしれないということです。
ひとたび狂犬病の発生、流行が国内であったら大問題になります。動物に咬まれるたびに狂犬病の心配をしなければならず、人は予防ワクチンや暴露後ワクチン接種のために多くの時間と費用を使い、狂犬病の潜伏期間におびえながら過ごすことになるかも知れません。犬を制御、管理できない飼育者、登録や狂犬病ワクチン接種をしていない犬も大問題になると思われます。
今のまま、国内が狂犬病フリーの状態でいられるように、しっかりした予防措置が重要です。まず入れない、侵入したら蔓延防止です。そのためにはまず検疫の徹底による侵入防止、また我々は犬の登録や狂犬病ワクチン接種(生後91日令以降の犬の登録と接種が義務化されています)の徹底に協力していく必要があります。
予防注射不要論やペット関係者から狂犬病ワクチンはしなくていいと聞いたなどという話も耳にしたことがありますが、正しい現状認識や知識がたりないための意見だと思います。ここで何回か書いた内容をご理解いただいて、決してそうではないことを再認識してください。
繰り返し述べていますが、海外で問題になっているさまざまな感染症は、狂犬病も含めいつ日本に入ってくるかわかりません。その可能性は十分あるのです。そのことを踏まえできることを確実に実施していかなければなりません。
たとえ狂犬病が侵入しても、流行が起こらないように犬へのワクチン接種を定期的に行って抗体保有率を高く維持しておく必要があります。猫は主に犬から感染を受けていて猫から猫の伝播はほとんど起こらないので、都市型の流行では猫への定期接種は現時点では必要ないといわれています。ですから、犬の狂犬病ワクチン接種と登録は飼育者の義務であるだけでなく、公共の利益に寄与するとともに、結局は飼い主自身や愛犬のために大切です。皆さん、ちゃんとワクチン接種してくださいね。
国内の清浄状態がずっと続くように皆さんぜひご協力ください。われわれ獣医療従事者は狂犬病の発生に関して心のどこかに一抹の恐怖心を感じながらすごしています。回を重ねて長々書きましたが、狂犬病や人獣共通感染症に対する注意喚起となれば幸いです。
8.平成19年春4月(魚沼よみうり4月12日号掲載)
今期は、暖冬で今までに経験のない雪の少なさでしたが、帳尻を合わせるかのような3月の降雪が毎年見ていたような景色を少しだけみせてくれました。そして、いよいよ待ちどおしかった春の訪れを実感できる時期になりました。
新年度の4月から、狂犬病の予防注射が始まっています。前回のシリーズでお伝えした内容をご理解いただいて愛犬や愛犬家のために、さらには公共の利益のために狂犬病の予防接種をお願いします。ただし体調の悪い犬はかかりつけの動物病院にご相談ください。また集合注射には飼い犬を制御できる人が連れて行ってください。他の犬とケンカをしたり逃げられたりしないようにお願いします。はがきも忘れずに…。
そして春は皆、活動的になる季節です。冬に比べ車もスピードが出て、犬や猫も外出の機会が増えますので、まず交通事故に注意してください。10年前に比べてずっと少なくなってきていると思われますが、事故で手術をしなければならなかったり、後遺症か残ったり、時には命まで失われる大変悲惨なケースも多く起こります。
交通事故は外出自由の猫にとくに多いのですが、犬も気をつけなければいけません。首輪がゆるかったり、首輪の金具が壊れていた、リードや鎖が悪く切れた、放して散歩させていた等々。犬の場合、飼い主さんのちょっとした不注意で起きることが多くあります。
狂犬病の集合注射の時にも、ゆるんだ首輪を付けている犬をしばしば見かけます。ゆるいと犬が嫌がったり怖がって、騒いだり後ずさりすると抜けてしまいます。結果、捕まえられず注射が打てなかったり、交通事故やケンカになったりと、思わぬ事態を引き起こしたりします。首から抜けるような首輪の付け方は首輪の用を成していませんので、一度確認することをお勧めします。くれぐれも事故等には気付けましょう。
飼い主の注意で予防できることをしっかり意識し、これからの過ごしやすい活動的な春を愛犬、愛猫と一緒に楽しんでください。
9.糞を捨てないで(魚沼よみうり8月2日号掲載)
動物好きの読者の皆様、ご無沙汰しています。
狂犬病の集合注射が今年度も無事終了しました。また、フィラリア予防の時期はもう始まっています。忘れていませんか。愛犬家の皆様、狂犬病のワクチン注射はもう済みましたか?まだ済んでいない方は市町村からのハガキを持って、かかりつけの動物病院で接種を受けて下さい。狂犬病の予防接種と登録は飼い主の義務です。よろしくお願いします。
さて、最近は愛犬家のマナーは向上してきており、放し飼いやノーリードでの散歩はあまり見かけません。しかし、散歩中の糞の始末はまだまだ十分ではありません。散歩中にした犬の糞は放置したり田や畑や水路に投げたりせず、飼い主が責任を持って拾って帰るのがマナーです。散歩の時はウンチ袋を忘れずに、必ず持っていってください。
今も残念ながら時々糞を見かけることがあります。場所によっては沢山あちこちに目立つところもあります。自宅の前や道に糞尿がある場合を想像してみてください。たとえ犬好きな人でも放置された糞尿を見るのはやはり気持ちの良いものではありません。そして糞が回虫などの寄生虫や細菌による病気の感染、汚染源になることも考えられます。このように衛生的な面からも問題がありますから、飼い主の責任で必ず糞の後始末をしましょう。愛犬の糞の始末は他人に迷惑をかけないという基本的なマナーの一つです。当院に来院いただく飼い主さんの中にも、残念ながら一部にマナー違反の方がいらっしゃいます。是非ご協力をお願いします。また、これを読まれた愛犬家の皆さん、今日から散歩の時にはウンチ袋を必ず持参しましょう。
保健所や市町村の担当窓口にも鳴き声や糞尿、放し飼いなど犬に関するさまざまな苦情があるようですが、糞の始末に関しては愛犬家一人一人が意識してウンチ袋を持参し、行動するだけで解決することができます。地域の住民が気持ちよく生活できるようにご協力をお願いします。(なんだか行政の担当者のようなお願いになってしまいました…)。
これから暑くなりますから、熱中症に気を付けて愛犬と楽しくお過ごしください。
10.猫を捨てないで(魚沼よみうり2007年8月23日号掲載)
この季節には病院に来院する子猫が多く見受けられるようになります。春にうまれた子が予防接種や健康診断、病気で来たりしています。
本来、猫の発情シーズンは大体1月から8月頃といわれています。これは太陽光の日長時間と関係があるのですが、最近の飼い猫は室内飼育などのため、蛍光灯のような室内光により本来のシーズンに関係なく発情が見られます。ですから、季節に関係なく秋や冬にでも妊娠と出産をすることが最近では普通に見受けられますが、やはり出産が多いのは今の季節です。かわいい子猫たちが多く来院する季節なのです。
どんな動物でも小さいときは、本当にかわいいものです。特に子猫の時期は、なんにでもすぐにじゃれついて夢中になって動き回ります。カルテを記入している傍でペンの動きにすらじゃれついてくるので、もともと上手な文字がますます上手になってしまったりします。その仕草の愛らしさを見ているだけでも楽しくなってきます。
でも、悲しいことがあります。そんなかわいい子猫たちが捨てられてしまうという現実です。それは捨ててしまう人がいるという事ですから、その無責任さには本当に腹が立ちます。子猫が生まれたら飼えないから捨ててしまえばいいというのでは、動物を飼う資格はありません。
野良猫になって周りの人が迷惑したり、捨てられた猫を保護した人がどれだけ苦労しているか。心ある人ほど、そんな状況を見過ごせずに保護してしまい、猫が徐々に増えていき苦労しています。本当に猫が好きで猫を大切にしている人達だと思います。
そんな方達や行政の方の苦労を見るにつけ、猫を捨てる人の身勝手さに憤りを感じます。
どうか、子猫を捨てないでください。
11.猫を捨てないで-2(魚沼よみうり2007年9月27日号掲載)
本来、猫は季節的多発情動物ですが、最近は室内光などの影響により繁殖季節に関係なく発情、出産をする傾向にあると前回に述べました。そして、猫の繁殖の特徴のひとつに交尾排卵ということが挙げられます。これは交尾刺激により血中ホルモンレベルが上昇して排卵が誘発されるということですから、結局、交尾すると妊娠の可能性が非常に高いということになります。また、生後四カ月から十二カ月で性成熟に達し、平均十カ月齢で最初の発情が来ます。そして妊娠すると約六十五日前後で出産します。また出産後の発情開始は、出産後二週間から離乳後二週間の間です。授乳中にも発情が来ることがあり、子育てをしながら妊娠することもあります。ですから一頭の雌猫は年平均二・二回のお産をするという報告もあるようです。
特に繁殖力の強い雌猫は一年に四回出産することもあり、その子供も生後一年たたずに出産することがあるので、一回に四、五匹生んだと仮定すると、なんと一年たつと十六~二十数匹に増えてしまうのです。次の年にはその猫も出産しますから、ネズミ算ならぬネコ算で恐ろしいことになるのです。ですから、油断は禁物です。発情が来てちょっと外出をしたと思ったら、一カ月もするとなんだかお腹が大きいような感じがして、もう一カ月もすると出産してしまいます。もし生まれた子猫を責任を持って飼えないのなら、そうなる前にきちんと避妊手術を受けさせるべきです。
以前、女性直木賞作家のナントカという人が、生まれた子猫を全部崖の下に投げ捨てるというようなことを某紙に書いたようですが、この記事を読んで嫌悪感を持たれた方も多かったのではないでしょうか。動物と楽しく仲良く暮らすのが第一ですが、人と暮らしている動物は野生動物ではありません。社会に迷惑をかけないことや命を大切にするという観点も必要です。 子猫を捨てて知らん振りは非常に無責任な態度だと思います。適切な繁殖制限のために避妊手術も必要です。増えすぎて困る前に考えてみてください。
どうか、子猫を捨てないでください。
12.猫を捨てないで-3(魚沼よみうり2007年10月11日号掲載)
今、多くの子猫が本当にかわいい盛りを迎えています。遊ぶ姿を眺めていると可愛くて可愛くて、ずっと見ていても飽きません。でも、捨てられてしまう不幸な子猫がたくさんいます。
餌も食べられずに衰弱していき病気に罹ったりして命を落としてしまう。あるいは、野良猫になって周りの人や猫に迷惑をかけたりします。なかには熱心な愛猫家に保護されて運良く、新しい飼い主が見つかって幸せになる子もいます。でも、その愛猫家の苦労と苦悩は大変なんです。捨てられている子猫を見てしまうと放っておけずに、大変なことがわかっているのについつい保護してしまいます。見捨てておけないんです。
さあ、子育ての始まりです。目の開かないようなチビ猫はミルク(牛乳などでなく猫用ミルクにしてください)を数時間おきに授乳しなければいけません。場合によっては母猫の代わりにおしりを刺激して排便や排尿を促してやります。数週間、夜に昼に世話をしてやっと離乳するのです。中には弱った子や病気の子もいるでしょう。治療や看護も必要です。愛猫家が労力や時間、経費をかけて一生懸命に世話をして、やっと
かわいい盛りを迎えます。かわいいなと思ったのも束の間、今度は新しい飼い主探しに悩むことになります。とても自分一人ですべての子猫を飼い続けることはできませんから、なんとか飼ってもらえるところを見つけるのにまた一苦労しなければいけません。そして生後二、三カ月の一番かわいいころには、他へもらわれていきます。良かったと思いながらも愛猫家は、すごく寂しさを感じて悲しくなったり、貰われた先で元気にしているかしら、かわいがってもらえているかしらと心配してしまいます。複雑な愛猫家の心理です。
そして生後六カ月も過ぎるようになると、新しい飼い主がなかなか見つかりにくくなります。発情の時期も近付き去勢や避妊手術も必要です。自分のところにいてくれるのも嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちでしょう。
こうして毎年毎年、愛猫家は一喜一憂しながら一生懸命子猫の世話をしています。うちの病院や保健所(今は正式名称ではありません)、ペット関連施設などにいろいろな子猫の新しい飼い主の募集情報があります。可愛がっていただける方が居られまし
たら問い合わせをお願いします。猫の新しい飼い主を募集しています。
生まれたら捨ててしまえばいいと安易に考えている猫の飼育者は、その行為がどんなに社会に迷惑を掛けているかよく考えてください。捨てるのは非常に無責任な行為です。自分で責任を持てないのであれば猫を出産させてはいけません。きちんとコントロールしてください。どうか猫を捨てないでください。
13.2009年1月3日・新年号掲載
“腹肉”と書いてハニーと読む(当て字)雄猫をおんぶする、やさしい“ゴン美”ちゃん “腹肉”と書いてハニーと読む(当て字)雄猫をおんぶする、やさしい“ゴン美”ちゃん“腹肉”と書いてハニーと読む(当て字)雄猫をおんぶする、やさしい“ゴン美”ちゃん “腹肉”と書いてハニーと読む(当て字)雄猫をおんぶする、やさしい“ゴン美”ちゃん 皆さんあけましておめでとうございます。
昨年は愛しい動物たちと皆さんにとっていかがでしたか。本年がますます良い年でありますようにお祈り申し上げます。
さて筆不精の小生は、やさしい魚沼よみうりの担当者から原稿依頼を受けると、毎回悩んでしまいます。お魚の好きな、某執筆者のような軽妙で洒脱で時々毒気もある素敵な文章に憧れるのですが、私のはどうもそうなりません。で、内容も結局のところ動物たちのことしか書けないので、今年も相も変わらぬ内容と文章で何回かお付き合いしていただけたらうれしいです。
最近の冬に多いなと思うのが、皮膚炎と体重増加です。特に室内で生活している犬に多いようです。統計を取ったわけでもないし論文が出たわけでもないので、あくまで私の個人的な感想ですがここ数年いつも感じます。もっとも皮膚炎が多いのは梅雨時から夏場ですが、冬にも皮膚の痒みで来院する犬が多くなりました。確かにアトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎の動物が増えていますから、いつも皮膚の痒みの問題を抱えている子自体が多いのですが、冬場に悪化する場合が見受けられます。直接の原因ではないですが悪化の一因として暖房器具が考えられます。こたつやストーブ、温風ヒーターの真ん前に居座り、熱風を浴びて被毛がアツアツになっている子はいませんか。結構そんな子が多いようです。皮膚が乾燥してフケが多くなったり発疹が出たりする子がいますので、皮膚の弱い子は気を付けましょう。
あとは体重増加です。冬を越して春に来院した際に体重が増えている子も多いようです。正月太りというわけでもないでしょうが、暖かい部屋で一日過ごし、外出や散歩は秋より少なく、こたつの脇でおとーさんの晩酌のお付き合い、など思い当たることはないでしょうか。お話を伺うと結構いらっしゃるようです。フィラリア予防のシーズンには、「あっ、体重ふえていますね〜。これ以上増えないようにしましょうね。」などと、完全に自分のことは棚に上げて喋っています。
そうそう、以前に何回も書きましたが、膀胱炎にも気を付けてくださいね。やはり冬に多くなります。尿結石による膀胱炎では排尿障害が出ることがあり、特に男の子は尿道閉塞を起こして急激な症状悪化が見られることがありますから、ご注意を。おしっこが赤い、トイレに何回も入るけど出ていない、トイレの格好をして力んでいる、食欲がない、吐くなどの症状がみられたらすぐに受診してください。もう何件かありますよ。本格的な冬を前に要注意です。
では、新年も動物たちと共に楽しくお過ごしください。
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